-真っ黒な雌の子犬が、ハバロフスクの収容所にいた。名前は「クロ」。
日本人抑留者たちが飼っていた。-
こんな書き出しで始っていた記事を、昨日読売新聞に見つけました。
【 戦後60年 シベリア抑留 「心支えた捨て犬クロ」 】 という記事でした。
いつ終わるとも分からない、過酷なシベリア抑留生活で、クロは心の支えだったそうです。
クロがシッポをふって、一日の作業を終えた日本人抑留者たちを迎える姿は、疲れきった
心を さぞや和らげたに違いありません。
抑留者たちは、わずかな食事ながら、少しずつクロに与え可愛がったそうです。
1956年 とうとう、すべての抑留者の帰国が決まり、クロとの別れ。
12月24日朝、最後の帰還船がナホトカの港を出港の直後、なんと クロが氷の海に
飛び込んだそうです。 帰還船を追って!
ハバロフスク から ナホトカ は、約800km。
誰かが、こっそり帰国列車にクロを乗せたのか?自ら乗ったのか? それは分かりません。
とにかく、クロはナホトカの港に来ていたんです。
「死んでしまう。岸にもどれ!」口々に叫んでも、クロは割れた氷の上を渡り歩き 追ってきたそうです。
そして、氷の間から海に落ち、抑留者たちの悲鳴が上がった。
帰還船の船長は、船を止めました。
縄ばしごで下りた船員が、クロを抱き上げ、甲板に響く歓声。
ぶるっと体を震わせ、全身の氷を振り払い、嬉しそうにシッポを振る クロ。
みんな涙が止まらなかったたそうです。
そのまま、舞鶴港までクロも帰還。
その後、クロは子供を産み、その子犬は船長さんに贈られたそうです。
この体験を語った、11年間の抑留生活を経験された井上さんは
「自分を救ってくれた日本人のことを、クロは命がけで追ってきた。
互いに苦しかったからこそ、心が結びついた。つらく長かった日々の中で
そこだけが今も輝いているようです」
と結ばれていました。
犬と人間の 心の結びつき
氷の海にまで飛び込む 一途な気持ち スゴイ。